米国株投資をしていると,たまに聞く「VIX指数」.
VIX指数は大きな株価変動が起きた時にしか話題になりにくいので,なんだかよく分からないひとも多いのではないでしょうか?

今回は,VIX指数についてできるだけ分かりやすく説明したいと思います
VIX指数とは
VIX指数を簡単にいうと,投資家が米国株価の先行きにどれほどの振れ幅を見込んでいるかを表す数値のことで,これは「米国株にどれほど不安を感じているか」と言い換えることができます.
米国株価の先行きにどれほど不安を感じているかを表す数値
VIX指数は「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」の略語で,株価変動率指数です.
日本語では,「恐怖指数」と呼ばれたりします.その名の通り,VIX指数はどれほど市場(投資家)が恐怖を感じているかを表す数値です.
先行きの値動き(変動幅)が荒くなると見る投資家が多くなるとVIX指数は上昇します.逆に,変動幅が小さくなると見る投資家が多くなるとVIX指数は下落します.
よって,VIX指数が上昇すると大きな暴騰や暴落が起きる可能性が高まることを意味するため,暴騰・暴落の予想に使われることがあります.
VIX指数は通常時では10〜20の範囲内で動くと言われており,30を超えてくると警戒すべきと判断されます.
記憶に新しいコロナショックでは,VIX指数が85くらいまで上がりました.
イベント | VIX指数 | |
---|---|---|
2001年9月 | アメリカ同時多発テロ | 約49 |
2008年10月 | リーマンショック | 約89 |
2020年3月 | コロナショック | 約85 |

ただし,当然ですが未来のことは誰にも完全には予想できないので,参考にするだけに留めることをおすすめします.VIX指数は,市場の投資家が予想した度合いを示すもので,株価の値動きに対してVIX指数が外れることも多々あります.
VIX指数の計算方法
さて,ここで気になるのが「なぜ,VIX指数は恐怖度を意味するのか?」ですよね.VIX指数の計算方法を見ていくことで,理解しましょう.
VIX指数は,正しくは以下のような式から計算されます(理解しなくていいです).


なにこれ!?意味わかんない!!!

そう言うと思いましたので,ここでは「どんなものから計算されているのか」だけに注目しましょう
この式は,ほとんどオプション価格というものから計算されています.

とにかく,「VIX指数はオプション価格から計算されている」ことだけ抑えておきましょう.
ここで,「オプション価格って何?」となるのが普通の反応ですよね.
以降では,細かいところまで知りたいひとのために少しだけオプション価格について説明します.
VIX指数を計算するためのオプション価格とは
オプション価格とは,オプション取引における商品『オプション』の価格のことで,プレミアムと呼ばれたりもします.
オプションとは,「証券や商品をある一定期間に決められた価格で売買する権利」です.オプションの説明として「投資の保険のようなもの」とよく例えられます.
オプション取引の例として,株価Aの上昇に連動する「半年後に290ドルで買う権利」のオプションを5ドルで買ったとします(コールの買い).
半年後に株価Aが300ドルになっていれば,「半年後に290ドルで買う権利」を使って10ドルの利益を得ることができ,オプションを買ったときの支払料5ドルを差し引いて5ドルの儲けをだすことができます.
これから分かるように,半年後には株価Aが295ドル以上になっていなければ儲けを出すことができません.半年後に株価Aが290ドルの場合は,「半年後に290ドルで買う権利」は正規の値段で取引するだけの意味のない権利になってしまうので,支払料5ドルの損ということになります.
ではこのオプション価格がどう決まるのかというと,原資産価格,権利行使価格,金利,残存期間,インプライド・ボラティリティ(IV)から算出されます.
ここで,ボラティリティとは投資の世界では変動幅のことです.ボラティリティには2種類あり,ひとつは過去のデータに基づいて統計的に算出するヒストリカルボラティリティで,数学的には「分散」としてよく使われています.
もう一つが市場で取引されている実際のオプション価格から逆算して導き出されるインプライド・ボラティリティ(IV)で,これは近い将来の株価見込みを含んだ変動幅であり,市場の予測・期待が反映されています.
逆に言えば,オプション価格が分かればIV(近い将来の変動幅)が分かるため,オプション価格を使用することは市場参加者の予測や期待などが反映されていることになります.
ちなみに,VIX指数の正式名称は「Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)」です.このボラティリティは,IVの意味に近いです.

まとめると,VIX指数,オプション価格,IVの関係性は次のようになります

将来の変動幅(IV)の意味を取り込んだオプション価格から計算されるVIX指数は将来の恐怖感(変動幅)を意味することがなんとなく分かってきたでしょうか.
・VIX指数はオプション価格から算出される
・オプション価格はインプライド・ボラティリティ(IV)と強い関係があり,IVから逆算してオプション価格を算出できる
・IVには市場の予測,期待が反映されているので,間接的にVIX指数は市場の変動幅の予測・期待の意味が込められる.
VIX指数は米国株に対する数値
VIX指数は米国株を対象として計算されている数値です.
もう少し正確に言うと,米国の主要指数の一つであるS&P500を対象とするオプション価格をもとにVIX指数を計算しています.
VIX指数は,シカゴ・オプション取引所が発表しています.
S&P500は米国企業株式銘柄の代表的な約500銘柄の株価を時価総額加重平均したものです.詳しくは最強インデックス「S&P500」に採用される条件とは?をご覧ください.
S&P500はざっくり米国企業の株価を反映している,日本で言う日経平均株価のようなものだと考えておけばOKです(ただし,厳密には計算方法は異なります).
そのため,VIX指数(恐怖指数)は米国株の先行きを表す数値だということを覚えておきましょう.
一方,日本株版の恐怖指数は「日経平均VI(日経平均ボラティリティ・インデックス)」という名前で存在しています.日経平均先物と日経平均オプションの価格をもとに算出されています.
日経平均VI通常は20~30程度のレンジ内で上下しているようです.VIX指数より少し高めですね.
まとめ
・VIX指数とは米国株価の先行きにどれほど不安を感じているかを表す数値
・VIX指数はオプション価格から算出され,オプション価格は市場の変動幅の予測・期待を含むインプライド・ボラティリティ(IV)から算出される
・オプション取引とは「証券や商品をある一定期間に決められた価格で売買する権利」を取引すること
・日経平均VI(日経平均ボラティリティ・インデックス)はVIX指数の日本版
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