IBMはクラウドで復活する?分析と今後の業績予想してみました

バリュー株(割安株)を探しているときに,IBMが目に止まりました.

現在のIBMのPERは12PBRは5.5と,そこそこのバリュー株だと言えます.

しかしながら後で見るように,IBMのチャートは長期的に見ればきれいな「下降トレンド」ですし,財務諸表を見るとお世辞にも健全とは言えません.

以前からIBMはバリュー株として有名で,あの投資の神様ウォーレンバフェット氏も2017年まで好んできた株ですが,バフェット氏はその後にIBMの株の一部を売却しました.

これだけ見ると,IBM株は完全に「終わった古株」感がしますが,最近持ち直してきているという前向きな予想も多いので,投資対象としてアリかを調べてみました.

キャピタルゲインにしろインカムゲインにしろ,リターンが期待できるようなら買いたいと思います.

※投資判断は自己責任でお願いします.

IBMのチャート

とりあえずIBM株のチャートを見ましょう.

引用元:Google

2012年~2013年をピークに,ここ9年くらいは下降トレンドです.

長い下降トレンドなので,これといった原因はありませんが,決算が悪かったり,財務が悪化したり,時代の波に乗った事業展開が遅れたりと,色々な要因でだらだらと下落しているようです.

これらの要因について,もう少し詳しく見ていきましょう.

IBMの財務

IBMの財務について見てみます.ただし個人的に重要だと思う項目のみをピックアップしているので,全ての情報を元に判断したいひとは正式な決算書をご覧ください.

※楽天証券口座から得た情報を元に作成しています.

損益計算書

2016/12 連2017/12 連2018/12 連2019/12 連
売上高79,919.0079,139.0079,591.0077,147.00
売上原価41,403.0042,196.0042,655.0040,659.00
販売費一般管理費19,440.0019,120.0018,217.0019,501.00
営業利益12,330.0011,400.0011,342.0010,166.00
当期利益11,872.005,753.008,728.009,431.00
減価償却費2,837.003,021.003,127.004,209.00
研究開発費5,726.005,590.005,379.005,989.00
EPS12.4412.0411.8010.80
一株当り配当5.505.906.216.43
(単位:百万ドル)

2019年に比べて2020年は売上が約20億ドル減少しました.とはいえ,2011年の売上は106,916百万ドルだっため,IBMにとってはここ最近はほぼ横ばいだと言えます.2011年から今年まで徐々に減少してきました.営業利益も同様です.

一方で,当期利益は増加しています.怪しいですね.営業利益もしくは経常利益が少ない,もしくは減少しているのに当期利益が増加しているときは,健全な財務でない場合がよくあります.特別損益は何だったのでしょうか?これから調べます…というよりも,営業利益が減少した理由を調べたほうが有益そうですね.

また利益に問わず,研究開発費はコンスタントにそこそこ多い額を捻出されています.売上に対する研究開発費比率としては同種平均と同じくらいです.後でも述べますが,今後は新たな技術開発のために研究開発費はコンスタントか増加すると思います.

減価償却費は増えていますね.何でしょうか?まあいいか…

貸借対照表

資産2016/12 連2017/12 連2018/12 連2019/12 連
現金同等物7,826.0011,972.0011,379.008,172.00
短期投資712.00620.00620.00696.00
現金・短期投資8,538.0012,592.0011,999.008,868.00
売上債権29,245.0031,630.0030,563.0024,219.00
棚卸資産1,553.001,583.001,682.001,619.00
その他流動資産520.002,256.002,909.002,037.00
流動資産合計43,888.0049,735.0049,146.0038,420.00
有形固定資産合計(純額)10,831.0011,117.0010,792.0015,006.00
無形固定資産4,688.003,742.003,087.0015,235.00
総資産117,470.00125,356.00123,382.00152,186.00
負債    
短期有利子負債7,513.006,987.0010,207.008,797.00
流動負債合計36,275.0037,363.0038,227.0037,701.00
固定負債(長期借入負債)34,655.0039,837.0035,605.0054,102.00
負債合計(有利子負債+支払手形)42,168.0046,824.0045,812.0062,899.00
繰延法人税424.00545.003,696.005,230.00
少数株主持分146.00131.00134.00144.00
その他負債27,724.0029,886.0028,925.0034,168.00
負債及び少数株主持分の合計99,224.00107,762.00106,587.00131,345.00
資本    
資本金53,935.00445.89446.69447.59
資本余剰金54,120.1154,704.3155,447.41
利益剰余金152,759.00153,126.00159,206.00162,954.00
純資産合計18,246.0017,594.0016,795.0020,841.00
負債及び資本合計117,470.00125,356.00123,382.00152,186.00
不良債権額
総資産経常利益率10.114.597.076.20
自己資本利益率65.0732.7051.9745.25
(単位:百万ドル)

一番分かりやすいところとして,現金同等物が2017年に前年度よりも一気に増加していますが,2019年にはまた一気に減少していますね.

固定負債が2019年で一気に膨らんでるのがものすごく気になります.

また,自己資本比率が2019年度で13.69%,流動比率が101.91なので会社の安定性としてはかなりギリギリな財務状況な気もします.会社の安定性として自己資本比率を参考にしている投資家には見向きもされないかもしれません.

ちなみにROE(自己資本比率)は高いですが,正直プラスのポイントではない気がします.当期(純)利益が少し怪しいからです.

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フロー2016/12 連2017/12 連2018/12 連2019/12 連
営業CF17,084.0016,723.0015,247.0014,771.00
投資CF-10,928.00-7,081.00-4,913.00-26,936.00
財務CF-5,917.00-6,418.00-10,469.009,042.00
現金同等物8,073.0012,234.0011,604.008,314.00
(単位:百万ドル)

営業CFが減少している一方で,財務CFがプラスに転じており,さらに投資を急激に増やしています.財務が悪化している様子が一目でわかりますね.

総じて,財務はあまり健全とは言えないようです.

投資が増えているので,将来のために準備しているという見方もできますが…

IBMはバリュー株として見られることが多いので,配当利回り推移を見てみましょう.

2017年から配当も利回りも穏やかにですが増えているようです.典型的なバリュー株という感じですね.

IBMの事業とこれから

IBMの事業

IBMの主な事業は,次の5つの事業セグメントで構成されています.

事業内容

クラウド&コグニティブソフトウェア

クラウドとAIによるソリューション事業.コグニティブ(Cognitive,認知)はAIだと思えばOKです.

グローバルビジネスサービス

ITにおけるコンサルティング事業

グローバルテクノロジーサービス

総合的なITインフラとプラットフォームサービスを提供する事業

システム

ハイブリッドマルチクラウドやエンタープライズAIワークロードの新しい要件を満たすのに役立つ、革新的なインフラストラクチャプラットフォームを提供する事業.また,半導体やシステム技術を設計.

グローバルファイナンシング

ファイナンス事業とリマニュファクチャリングおよびリマーケティング事業

正直,グローバルビジネスサービスとグローバルテクノロジーサービスとシステムの違いがはっきり分かりません….どれも,ITコンサル,ITソリューション的な事業なんだろうな…という感じです.

売上比率

売上比率(2019/12決算)は以下のようになっています.

※小数点1位以下は五捨五入

グローバルテクノロジーサービスとクラウド&コグニティブソフトフェア,グローバルビジネスサービスが主力となっていますね.

先ほど述べたように,IBMは2011年くらいから徐々に売上が減少してきました.その理由は『クラウド』であると見られています.

それまで大型コンピュータ,つまりハードフェア込みでの販売,保守・運用に力を入れてきたIBMは,クラウド移行への時代の流れに対応が遅れました.一方で,アマゾンやマイクロソフトのクラウドサービスが市場を取り始めました.

すなわち,IBMのクラウド事業が拡大することは遅れながらも必然だと言えます.

復活する?今後の事業について

クラウド

IBMの事業の中で特に注目されているのが,「クラウド」です.IBMはクラウド事業強化のため、2018年10月(2019年7月に手続きが完了)にオープンソースソフト大手「レッドハット」を買収しました.

レッドハットはクラウド構築オープンソースなどを提供している会社です.2019年の決算を見ると,この買収は”あたり”だったという見方がされています.

今後も,このクラウドを展開していくと思われます.クラウド事業は技術力が必要不可欠なので,IBMはある程度の利益を確保できると考えられます.

IBMは28年連続で米国特許を最も取得したことからも技術力の高さがうかがえますね.

AIやクラウドの市場は今後拡大していくとみられているので,やっと調子が上がってきたクラウド・AIで今後は株価も上昇する可能性がありそうです.

量子コンピュータ

私がIBMに注目している理由の一つが,「量子コンピュータ」です.

IBMと言えば,AIの『ワトソン』が有名ですが,量子コンピュータの界隈では『IBM Q』も有名です.量子コンピュータと言えばGoogleかIBMか,という感じです.

量子コンピュータに興味があまりない人は,この部分は読み飛ばしていただいて構いません.

量子コンピュータは,現在はまだマイナーな分野ですが,今後大きな利益を生む可能性があると思っています.2024年で2500-5500億円(20-50億ドル)程度の市場規模,2050年には年間50兆円程度から最大93兆円程度の市場規模になると言われています.

量子コンピュータは簡単に言えば「今までになかった超速い計算機」ですが,投資目線では,量子コンピュータでどのように利益が出るのか?というのが気になると思います.

主に,量子コンピュータには以下の用途が考えられます.

組合せ最適化問題,暗号解読(因数分解など),ネットワーク問題,物流問題,資産運用(ポートフォリオ最適化など),DNA計算、マーケティング計算,微分方程式,線形代数,流体計算,分子シミュレーション

「これ以上コンピュータの性能が上がってどうするの?」と思う人がいるかもしれませんが,実は今のコンピュータでは現実的な計算時間では解けない問題というのが山ほどあります.大規模な組合せ最適化問題がその典型例で,配送計画問題など,非常に実用的な問題です.

また,反対に「絶対に解けていはいけない問題」というのも存在しており,暗号解読がその例です.量子コンピュータを使えば,暗号解読が容易になります.暗号はインターネットのセキュリティに使われているので,暗号解読はセキュリティを脅かすことを意味します.つまり,量子コンピュータは悪い人の手に渡れば「悪」になります.

一方で,量子アニーリングの第一線で技術開発をしているIBMは,量子コンピュータによる暗号解読を理解しているため,セキュリティを組むことができます.

もしも量子コンピュータによるクラッキングができるようになった世界が来るとしたら,そのクラッキングから守るセキュリティを持っている企業は重宝され,セキュリティの派遣を握り莫大な利益を出すでしょう.クラウド事業による利益拡大よりも現実味はありませんが,ポテンシャルとしては大きい事業です.

量子コンピュータについては語り足りないのですが,今回はこれくらいにしておきましょう.

IBMは買い?

財務状況はあまり健全ではない一方で,

今後はクラウド事業に期待でき,研究開発・設備投資にかなり注力している感じがします.

なので,私はキャピタルゲインとインカムゲイン半々くらいの期待感で,IBM株を買いたいと思っています.

…が,長期の下降トレンドが続いているので,焦って買う必要はないかと.

上昇トレンドに入ったことがわかってから買っても遅くないと思います.

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